意地悪な片思い
デスクに座って自身の仕事に向かっている長嶋さんは、眉間にしわをよせ、真剣に考え事をしていらっしゃった。
凛々しい眉、涙袋が特徴的、だけど瞳は意外と涼しい。私は待っている間、視線が合わないことをいいことに何気なく見つめてしまう。
ちょっと経って、見ていた資料からパっと長嶋さんが顔を上げると、
反射的に私も視線をそらした。
「ん、これこの間提出してくれた奴だけど、
追書きしたからそれ参考にもうちょっと考えてみて。」
「はい。」
受け取ったそれはこの間提出した、再来月のイベントの企画書だった。白い紙面の端に青い正方形の付箋がぺたりと一つくっつけられている。
「あと悪いんだけど資料室の整理任せていいかな。
仕事終わって帰る前でいいから。」
「分かりました。」
お辞儀して席に戻ると、すぐに付箋の内容を確認した。
優しい口調で指摘された改善できるポイント。
書かれている字も男の人にしては少し丸こっく、筆圧も濃くない。長嶋さんの文字を見るたび、文字にその人の性格が表れるというのは本当だと常々思ってしまう。
大人で、性格も素敵で頼りになって。
長嶋さんの下で働けると分かったとき、すっごく嬉しかったなぁ。
書類を確認し終えた私は、何気なく長嶋さんを見た。
さっきまで座っていたはずのデスクにいないその姿を探すと、遠くのほうで誰かと難しそうな雰囲気でお話をしている。
…速水さんだ。
この間も下の階で長嶋さんと話したっていってたし随分親しんだぁ。
彼に告白される前からそうだったのだろうけど、特に意識はしてなかったから今更気づくこともたくさんある――――あ、そうか。
長嶋さんって、速水さんと同期だったけ――。