意地悪な片思い

「暇じゃないですよ。」

「何かあんの?」

 私は午後からの予定を一瞬考えて、
「…掃除。」
 ぼそりと告げた。

「市田のことだからまだ掃除していないと思った。」
 わざとらしい棒読み、

「失礼ですよ。」

「ごめんごめん」
 また彼は笑う。

「掃除はちゃんとしなきゃね、市田さん。」

「私の名前だけ強調するように言って。
こういうときだけ年上面するのやめてくださいー。」
 
「ばれてたか」
 ごめんね、って優しく謝った。

「本音はあれかな。年末休みで俺と会えないからちょっとは寂しくなってるかなーと思って。」

「ふーん。」

「なんだよ、ふーんって。」
 彼は不満そうに笑う。

「速水さんは?」

「俺?」

「はい。」
 寂しいって思ってくれてる?

「俺は……さぁどうでしょう?」

「…そういうと思いました。」
 私が素直じゃないのに、
速水さんが本音聞かせてくれるはずがない。

彼は少し笑った。

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