意地悪な片思い
「市田大変そうだから、仕事内容的に間接的ではあるけど頼んだって、言い捨てるように言ったんですけど、
普段頼んだなんて先輩使わないからちょっと驚いちゃって。」
誰かに頼まなくても、速水さん何でも一人でできそうだもんね。
ごくんと私はインゲンを飲み込んだ。
「あれで結構後輩思いだからなぁ。
長嶋さんに泣きつけないから、
速水先輩に前相談でもしてたんですか?」
すみませーんと内川くんはお酒を注文する。
電話はしたけど……それが仕事のことだって言わなかったのに。
速水さん分かったのかな、もしかして。
いや……まさかね。
「俺たちの部署だって結構手一杯だったのに、たぶん速水先輩が俺の分カバーしたんじゃないかなぁ。」
だけど、助けられてたって事実に変わりない。
電話だけじゃなくて私はまた違う形で彼に助けられてたんだ。
何が間接的だよ。
十分直接的だっつーの。
「あ、ちなみにこれ内緒で。
速水先輩こういうの嫌がりますから。」
うん、内川くん。
言われなくたって知ってるよ。
速水さんはそういうの意地でも認めないヒトだってことぐらい。
「内川くん教えてくれてありがとう。」
たぶんこうして教えてもらえてなかったら、私気づかないままだったよ。
「今度お礼しとくね。」
ズボンのポケットに入ってる携帯を、そっと布の上から私は触った。