意地悪な片思い
「市田、ちょっといいかな?」
「はーい!」
仕事だ、仕事だ!
パソコンを打つ手を止めた私は長嶋さんのもとへと急いだ。
「この間直してくれた奴よくなってたよ、この調子。」
にこっと微笑む彼。
「ありがとうございます!」
さっきまでのもやもやが消え、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「えっとそれで、今忙しそうにしてるとこ申し訳ないんだけど、」
「全然かまわないです!」
「……あ、そう?それは助かるけど。」
一瞬きょとんとした顔の後、長嶋さんは言葉をつづけた。
「俺たちの部署じゃなくて、隣の部署の仕事なんだけど。」
「隣の部署?」
「今度××会社に営業に行くらしくて、
来週のイベントの企画もその時詳しく紹介しようとしてるんだって。
それで市田も一部企画して今携わってるし、話一応聞きたいって。
忙しいし断ろうと思ったんだけど、力入れてるらしいから特別にってことで市田に聞いてみたんだけど……
でも、余裕あるみたいだからよかった。」
目じりを柔らかく下げた長嶋さん。
一方の私は、表情が一気に青くなる。
「えっと…それでどなたに……。」
近づく足音。
カーペットがもふもふ音を立てる。
至近距離でその人を見るのは久しぶりだ。
「長嶋、話し通してくれた?」
よく通る彼の声が私の耳に突き刺さった。