意地悪な片思い

 コンコン。数回のノック音。
1回深呼吸して気持ちを整えた私は、彼が開けるよりも早く扉に手をかけた。

「ありがと、お待たせ。座ってて貰ってよかったのに。」
 
「飲み物、用意していただいているので。」

速水さんは紙コップをテーブルに置くと適当に席に座った。私は彼から席を二つほど開け、ななめに向かい合うような形をとる。

「そんな時間くわないから安心して。長嶋からもよくよく言われてるから。」
 苦笑しながらそう言う速水さん。

私が短く返事すると彼はメモ帳を開いた。質問の前に何か小言の一つや二つ言われるのかと思っていた私は、彼の行為に拍子抜けしてしまう。

彼はいたく真剣な表情ですぐに本題の仕事に入った。

企画の内容、自信を持っている点などなど、あらかじめ考えていたと思われるものを彼は次々に聞いてくる。

減らないコーヒー、
どんどん彼のも私のも冷めていく。

すごい適当な人かと思ってたのに。
速水さんってこういう一面もあるんだ。

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