意地悪な片思い
―――…その2時間後
「あつ。」
すっぽりと首元まで体を覆っていた布団が暑苦しくなって、俺は眼をさました。
寝汗がすごいのかもしれない、普段は全然かきもしないけど。
俺はそのまま上半身を起こす。
ぼーっとしながら、市田ちゃんと帰ったんだなとすっかりなくなってた右手の感触に、彼女のことを考えた。
随分遅くまで看てもらったけど本当に大丈夫だったのか?
明日連絡してみないと。
喉の渇きを覚え、水を飲みたいと思った俺は体を起こした。
寝るときは豆電球にも頼らず、真っ暗闇だ。今そうなっているのを見ると、こうしてくれた彼女、つまり市田も寝るときはこうするらしい。
隔てていた戸を自分の体分だけ開けた俺は、頭にすっかり定着しているリビングを器用に移動する。
キッチンに立つと俺はすぐに冷蔵庫を開けた。漏れるオレンジ色の光が真っ暗な部屋をかすかに照らす。
ドアポケットにしまっているミネラルウォーターに手を伸ばして、一瞬俺は手を止めると、その横に入ってたポカロを掴んだ。
市田が買ってきてくれたのだ。
飲み干すのはもったいない気もするけど、でもこのまま冷蔵庫に入れっぱなしってわけにもいかないし。
後ろ手で冷蔵庫を閉め、俺はキャップを開けた。
直後、カラカラっと音を立てて床にキャップが落ちる。
風邪のせいで力がなくなってるからとか、手元が狂ったからとかそういうんじゃなくて。
まだ寝ぼけてるのかと一瞬俺は目を疑った。
けど耳から聞こえてきた小さな音が、
そうじゃないって教えてくれてる。
……ばか。
なんで帰ってないんだよ。
冷蔵庫の扉は勢いをなくして―――まだほんの少し、部屋に明かりを漏らしてる。
リビングのソファに座りながら、薄い掛け布団だけで寝てる彼女を。