意地悪な片思い

「あれ?市田最近おにぎり多いね。」
 通りすがった長嶋さんが、
私の手の中に収めていたおかかのおにぎりを見てそう言った。

「休憩、先いただいてます。ちょっと節約中です。」

 昨日炊いたご飯で握ったおにぎり。コンビニで買えば百何円とかだけど、実家から送られてくるご飯で済ませば0円だ。

「えらいなぁ、俺も明日おにぎりにしよっと。
あ、品川さんちょっとこれ……。」

 揚々で返事をしてくれた長嶋さんはまだお仕事が立て込んでいるのか、私の隣の席の品川さんに声をかけた。

長嶋さんに褒められちゃった。
私は鼻歌でも歌いたい気分を抑えて、おにぎりを頬張る。

あとおにぎりは2個、タッパには簡単なサラダと卵焼き、小さなお好み焼きなんかも入ってる。(これも昨日の残り物)

そして、牛のロゴが入った缶。

これは余分なお金、だってちょっと前は給湯室のコーヒーでお昼は済ませていたから。

会社のそばでは今だ見つけれてないのだけれど、自分の家の近くのお店で同じものが売られているのを発見したからラッキーだった。

ドリンク代がかさんでしまうけれど我慢。
このロゴを見るだけでなんだか元気が湧いてくるし、ほっこりしてくるし……ね。

わざと給湯室避けてるとか、そういうんじゃない。

おにぎりばかりのも、そういうんじゃない。

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