意地悪な片思い

「…DVDの話だけでいんですか。」
 私はふぅ~っとコーヒーに息を吐いた。

「どういうこと?」
 速水さんは私を見つめる。

パチパチと目を動かしてる。

まるで、あの日の私みたいに。


「速水さんのこと、」

 私は彼にばかって言うときと同じ口調でつぶやいた。


「好きなんですけど。」


「……え?」

 私はごくっとコーヒーを飲んだ。

コーヒーとは違う、別の苦い香りをまたかぎながら。





【おわり】

< 303 / 304 >

この作品をシェア

pagetop