意地悪な片思い
彼に向き直ると相変わらず枝豆を食べているのか、彼のおてしょうには枝豆の殻タワーができていた。
枝豆しか食べてないんじゃ…。
隣で盛り上がる二人に加わろうともしないで、とにかくパクパクパクパク。
まぁ、分かっちゃうけどその気持ち。
食べだしたら他のもの気にならなくなって、中毒みたいに無我夢中で枝豆を口いっぱいに入れ込んで。
あーあ、やっぱり意地張らずに私も枝豆頼めばよかった。
速水さんが頼むから何となく同じのが嫌で遠慮しちゃったんだよね。かといって彼がおいしそうに食べてるのを貰うっていうのも申し訳ないっていうか。
「…枝豆食べれば?」
ぼそりと速水さんが口を開いた。
いや大丈夫です、って心の声。
「いいんですか?」って思わず出た私の声。
「物欲しそうに見てるなぁって思って。」
くすりと笑いながら、彼は枝豆が入ったお皿を私の方に寄せた。
……サンドイッチの時といい、
私速水さんにとんだ食い意地張った女だって思われてやしないだろうか。
「いただきます…。」
「うん。」
速水さんはビールを飲んで、サラダを自分のにとりわけ始めた。
パク。私ののどにひゅーんと勢いづいた枝豆が入っていく。
「うまい?」
こくっと私は頷いた。
彼の悪戯っぽい表情から見るに、どうせまた「餌付けだ。」とか思われてるんだろうな。
でも…いいや、なんかそう思われても。
彼のその表情は案外嫌いじゃないから。