意地悪な片思い

 10分ほど歩いた。

たち並ぶ住宅の窓から洩れる光が消える所も出てきた時刻、あと少しで内川くんともさよならする別れ道にたどり着く。

その人はどっちの道行くんだろう…。
右?左?

内川くんも速水さんも二人で話しているけどそれらしい会話が出てこない。私が一番知りたい情報だったりするのに。


「市田さーん。」

「うん?」
 内川くんの言葉に俯いていた頭をあげる。

「僕だけちょっとそこの外れにあるコンビニに行くんですけど、用事ありますか?」

「えっと…」
 私は隣に立っているその人をちらりと見た。

2人っきりは気まずい気もするけど、でもああいわれた手前露骨に避けるのは…。


「私はいいかな。」

「じゃぁ僕だけ行ってきますね。」
 タッタッタ――と、軽快なリズムで彼は駆けていく。

「足はや。」
 ぽつりと速水さんはつぶやいた。

「ですね。」
 私も答える。

「コンビニ行くと思った。」

「……そこまで避けないですよ。」
 むくれっ面の返事。

「そこまでってことは避けてたんだ。」

「ち、ちが!」

「はいはい。」
 それから私が避けていた理由も聞かずに彼は黙った。


はぁ。吐きだした息が二つ白く漂う。
私のと、速水さんのと。

4つ角の一角、塀の前で二人で立って人が一人はいるか入らないかの距離。

「疲れてない?」

「大丈夫です。」

「そっか。」

「寒いね。」

「寒いですね。」

短い会話。静かな空気感が変な気まずさを追い立ててきていた。

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