意地悪な片思い
「内川くんは何買いに行ったんですか?」
「明日の朝飯とか振り込みとかもろもろ。
いっとくけど内川の買い物すごい遅いから、ってこれ内川と飲んだときもしかして体験した?」
「いえ、その時彼買い物しなかったので。
でも、内川くんは確かに遅そうです。」
くすっと私は笑った。
「あーさみい。」
速水さんは息を吐いて口元へ持っていった丸めた手を温める。
「速水さんは寒いの苦手そうですね、細みですから。」
「細いって言うな。」
「いた。」
間髪いれずにコツンと頭に中指の頭突きが落ちてきた。
なんだよ、もう。
私は彼を見上げる。
私よりも30センチほど高い背。
横顔も整っていて、右目じりの泣きボクロも白い肌も、醸し出す大人の雰囲気も変わらない―――――が頬と耳は赤色ですっかり染まっている。
速水さんの嘘つき。
やっぱり、寒いの苦手なんじゃん。