意地悪な片思い
誤解のからまわり
ふらふら左右に揺れている黄色い猫のおもちゃの前、私は後ろにくくった髪を結びなおす。
出勤している日に髪のことを気にしたのはいつぶりだろう。くくり直したことなんかあっただろうか。
それでも今日は朝巻いたおくれ毛が、いまだふんわり保たれてることに嬉しくなったりしてる。逸る気持ちも少しだけ収まったかな。
頭をぐるりと斜め上に向けて、後ろ髪の様子もチェックする。お店のお手洗いということもあってさすがに鏡のサイズは大きい。水面台は3つ並んでいるけれど私以外に誰もいない。個室の中にもだ。
まだ会社終わりに飲みに来る人のラッシュには早いのか、私は3つある個室のトイレを独占中、といっても呑気にここで容姿確認している場合でもない。
お店に入り簡単な注文を終えてから、
長嶋さんに断りを入れて私はお手洗いに今いる。
長嶋さんが一人席で待っているのだ。
私たち二人は誘われた身でありながら早くに仕事が終わったため、内川くん達もまだ来ていない。食事がすでに運ばれていれば長嶋さんも時間をつぶせるだろうけれど、それもなしじゃ居心地もわるいはず。
「よし。」
気合いを入れて私は最後にコツンと猫の頭を撫でた。
私が触れたせいで先ほどよりも激しくなる動き。
がんばれって言ってくれている気がした。