意地悪な片思い
「あれ?」
席に戻って驚いた、長嶋さんの前に既に一人誰か座っている。
「おかえり、市田。」
「さっき着きました。」
長嶋さんの正面に座り、にこりと笑みを浮かべる内川くん。
「ただいまです。」
もうしばらく彼らがお店に来るまでかかりそうだと思っていたのだが、予想よりも早く着いたようだ。自分が思う以上に、長時間お手洗いにこもっていたという可能性もあるけれど。
速水さんの姿はまだ見えないが、彼はもう少し遅れてくるかお手洗いかどちらかなのだろうか。
私はまだそのことに触れず、
「早かったね。」
長嶋さんの隣に着きながら私は彼に告げた。
「あー、本当にさっき着いた感じなんですけどね。」
「そっか。」
カバンの中にいれていた携帯を取り出し、連絡を確認すると確かに数分前に彼から「着きます!」と1件届いている。
「すいません。」
隣を通りかかった店員さんに内川くんはビールを一つだけ追加注文した。
「あれ……」
疑問に思った私は内川くんに口を出す。
「速水さんそんなに遅くなるの…?」
口に出すには少し勇気がいったその人の名前。でも彼にそう聞かずにはいられない。
「あ、それなんですけど。」