クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
私は、勢いよく彰斗の手を振り払った。

「さっさと皆の所に戻りなさいよ! それで、さっきの話の続きで盛り上がれば!?」

そう言い捨てると、私は駅の方へ駆け出した。

思えば、彰斗に対してこんなに感情をあらわにしたのは、これが初めてだ。

彰斗は、それ以上追いかけて来なかった。



……あんなヤツだったなんて……!

これまでの彰斗との思い出が、音もなく崩れ落ちていく。

私は真剣だった。真剣に恋をしていた。

なのに、彰斗は、失恋で自分の心の隙間を埋めるために、私に近寄ってきただけだったんだ……!

それで、黒本さんていう本命の女性が現れて、用なしになった私は、捨てられたんだ……。

それに、別れ話なんて、あの時、一回だけだったじゃない。なのに、勝手に別れを渋る重い女扱いされて、陰で笑われてたなんて……!

私がどれだけ、悩んだと思ってるの……!?


いろんな思いが頭の中を駆け巡り、感情はぐしゃぐしゃだ。

悲しい、というより、悔しい。

自分は一人の女として、彰斗に見てもらえてなかった。





『いろいろ悩んだり、それも香奈の大事な一部だ』



あの日、彰斗のことを思い出して感情がごちゃごちゃになってた私を突き放したりせずに、小野原さんはそう言ってくれた。



そんな、小野原さんの気持ちを踏みにじられた気がした。



……だから、こんなに悔しいんだ……。




……小野原さん……



会いたい……。




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