クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「はぁ、だからって、何で私の所に来るかなぁ……」
私の目の前には、腕組みしながらため息をつく志帆がいる。
「……ごめんね、志帆……せっかくのお休みの日で旦那さんいるのに、呼び出しちゃって……」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ。うちのダンナなら、親友のためにすぐに行ってやれ、って言ってくれたわよ」
ここは志帆の近所の駅近くにある、カラオケボックスの一室。といっても、歌いに来たわけじゃない。
あの後、私が連絡したのは、小野原さんではなく……志帆だった。
「話は分かったけど……香奈は、小野原さんに会いたいと思ったんでしょ。何で、素直にそうしないのよ?」
「だ……って……昔の恋の傷を忘れるために会いに行くみたいで……それって、 彰斗と同じことしてるような気がしたから……」
「もう、じれったい!香奈と彰斗さんとじゃ、状況が違うでしょ!それに、小野原さんは香奈の全部を受け止める、って言ってくれたんでしょ? 何で変なとこで立ち止まるのよっ!いつまでも、あんないい男、待たせるんじゃない! 」
志帆は私の前で、仁王立ちになってご立腹だ。
志帆の言うことは正しい。それでも躊躇してしまうのは、私が弱いからだということも分かってる。
「……ごめん……私、いつまでたっても成長出来てなくて……」
「ああ、もう……」
志帆は、肩を落とす私の横に座る。そして、今度は優しい声で言った。
「あのね、香奈。この前は、小野原さんとのことはゆっくり進めて行けばいいと思う、って言ったけど、それは周りに急かされるんじゃなくて、香奈自身でちゃんと答えを見つけて欲しかったからよ。……もう分かってるでしょ?」
「……うん……」
「香奈はどうしたいの?このまま帰る?」
「……私……」
真っ先に頭に浮かんだのは彰斗ではなく……小野原さんの顔だった。
私はスッと立ち上がった。
「私、小野原さんに会ってくる……!」
バッグを手に取り、出口に向かう。
でも、「あ、お金……」と志帆の方を振り返った。
「ここは私が出しとくから、いいよ。せっかくだから、今からダンナ呼んで歌おうかな」
「……ありがとう、志帆。話、聞いてくれて」
「うん。行っておいで」
志帆は手を振って笑った。