クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
カフェを出て、駅から電車に乗る。

数十分後、降り立ったのは自宅のある駅ではなく、小野原さんのマンションの最寄り駅。



--いくら心で思っていても、相手に伝わらなければ、意味がない。

私はまだ、小野原さんに一番大切なことを伝えていない。



徒歩五分で、小野原さんのマンションに着いた。

部屋番号とインターホンを押したけど、返答はない。

まだ、帰ってないのかな……。それとも、私が来たのが分かって、居留守使ってる……?

いやいや……。

私はそんなネガティブな思考を追い払うように、首を振った。

弱気になっちゃ、ダメだ。

オートロックなので、私はエントランスからこれ以上、中に入れない。

かといって、正面でずっと待ち構えているのも、住人に不審がられると思い、建物のはしっこの、あまり目立たない陰に移動して、待つことにした。





どのくらい時間が経ったか分からない。待つ時間を意識しないように、時計は見ないことにしていた。

暦はもう十一月。

冷たい木枯らしに冬の気配を感じる。

……寒っ……。

身を縮めたその時。




オレンジ色の薄暗い街灯に照らされて、小野原さんらしき人が、道の向こうからこちらへ歩いてくるのが見えた。





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