クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「何だそれ……選挙にでも出るのか」

小野原さんの少し笑いを含んだ声に、ハッと我に返る。

……ああ……呆れられた……。

恥ずかしさでいっぱいになり、腕を引っ込めようとした時。

小野原さんが、グイと私の手を掴んだ。

「え……?」

そのまま、引っ張られるように建物の陰に連れ込まれる。

「さすがにあそこじゃ目立つからな」

そうつぶやくと、小野原さんはパッと手を離し、正面から私を思いきり抱きしめた。

「え……あの……?」





「立候補なんかしなくても、俺には香奈しか見えてない」




……え?……今、何て……?

私は自分の耳を疑った。これは、幻聴かもしれない。

慌てて、小野原さんを見上げた。

小野原さんは、いつもと変わらない優しい目で私を見つめている。

何がどうなったのか分からない私は、口をパクパクさせることしか出来ない。

「あ、あああ、あの……っ」

「香奈、ゆっくり深呼吸」

「……あ、は、はい」

何度か息を吸って吐いてを繰り返し、落ち着いた所で、今の状況を整理する。

私しか見えてない、って言った……?

「えっ、怒ってないんですか!?」

「何が?」

「何が、って……私、あんなにヒドイこと言ったのに……」

思い出して、胸が苦しくなる。

「さっきから許す、とか、本心じゃない、とか何を言ってるんだ?」





……え?




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