婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「やり方汚ねえんだよ。俺が聞いてる前で生駒一人誘えば、もれなく俺がついて来るってわかってんだろ」

「えっ……!? い、樹さんもご一緒ですか!?」


樹さんが愚痴る声に反応して、私は彼のデスクに両手をついて、大きく身を乗り出していた。


だって、今まで樹さんと一緒にランチに行ったことなんかない。
飲み会とか、みんなが集まる公式の場でしか、樹さんと同席出来なかったのに!


ググッと顎を仰け反らせながら見上げる私にギョッとしたように目を丸めて、樹さんは素っ気なく私に背を向けた。


「わかったよ、俺も行く。……ただし条件がある。俺はまだ認めてないんだ、人目につく場所に出向いて、勝手な噂をされても困る。機密会議扱いでもてなしてもらおうか」

「き、機密会議っ……?」


樹さんが話しているのは電話の向こうの社長だとわかっていながら、彼の言葉尻を拾って質問をぶつける。
ずっと向けられたままの背中に焦れて、私は樹さんの前に回り込み、電話をするその顔を覗き込んだ。


「あ、それから。あんたが言い出したんだ。もちろん部外者の同席は認めない。深雪さんも入室禁止だからな」

「み、深雪さんって誰……!?」


樹さんは眉間の皺を深めながら、またしてもシレッと私に背を向けてしまう。
< 106 / 236 >

この作品をシェア

pagetop