婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
確かに、樹さんの言う通り。
『夜を楽しみにしておけ』なんて言われたせいで、あれからずっと落ち着かず、樹さんの気を逸らすことばっかり考えていた。


そこで私が考えた作戦……。
今夜は週末だし、豪華にお出迎えすれば断られないかもと思った。


ここ一週間、私が作った食事を食べてくれた確率は、だいたい三十パーセントといったところ。
それでも最初の一週間はまったく見向きもしてくれなかったんだから、守備は上々。


どんどんお酒を飲ませて酔い潰してしまえば安心!という作戦だったんだけど、見抜かれてしまったらそう上手くいくわけがない。


冬も近いこの季節。
とは言え、室内のエアコンは控え目なのに、私はじんわりと変な汗が滲むのを感じた。
樹さんは私が焦る様子をしげしげと観察してから、フッと意地悪に口角を上げて、ゆっくりと距離を狭めてきながら私の顔を覗き込んだ。


意地悪なことを考えてる時ほど、樹さんは色っぽく妖しい空気を纏う。
それが、まだ短い同居期間で私が新たに知ったことだ。


そして、まさに妖艶に目を細める樹さんに、私の警戒心はMAXに達する。


「あ……あの……樹さん……」


引き攣りそうになりながら、なんとか笑顔を作る私に反して、樹さんの方は余裕で口角を上げる。
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