婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「そこまで意識されると、期待されてるみたいに思えるな。手を出すのが義務にも感じる」

「ぎ、義務って……」

「この一週間、だいぶ控え目に仕掛けてきたけど、ツーステップくらい飛び越してみるか?」


普段からちょっと低めの声を更にワントーン下げて、私の耳元にそう囁きかける。
しかも意地悪に吐息を吹き掛けてくるから、私の身体はビクッと震えて強張った。


その反応に、樹さんは面白そうに笑う。


「お前、マジで弱いな、耳。……どう弄っても、いつもビクッてなる」

「わかってるなら、止めてくださいっ!」

「バカだな。わかってるからやるんだろうが。……反応されなきゃ、やる意味もないんだから」


私の反論にはシレッと素っ気ない一言を返しながら、樹さんはもう一度、フーッとゆっくり私の耳を息でくすぐる。
さっきよりも大きく敏感に反応する私に、満足そうに笑い声を嚙み殺している樹さんを、私はキッと横目で睨んだ。


「そんな顔すんなよ。どうせあと二ヵ月もしたら、悪足掻き期間も終了。婚約披露して即結婚だ。俺もそろそろ覚悟決めとくかな~。……なあ、帆夏。このお試し同居で唯一意味があることしておくか?」

「はい……?」

「最初に言ったろ? 身体の相性。……試しとく?」
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