婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
とは言え、私を心配する親心だと言われれば、もうぐうの音も出ない。


私は十歳歳の離れた姉とは違い、特に美人でもなく多才なわけでもない。
あるのは生駒の姓だけ。
他にはなんの取り柄もないただの人。


好奇心旺盛で自分から出会いを求め、見事将来有望な青年実業家と結婚した姉。
対して私の方は、臆病で二十歳を過ぎてもまともに男性とお付き合いしたこともなく……家族全員が私の行く末を案じていた、と言われてしまえば、黙るしかない。


この時代、この年で政略結婚なんて!という反論は、もちろん口を突いて出てきやしない。
黙って聞いていれば父の言う通り、その縁談は確かに私にとって最良で、幸せを約束されたようなもの、という刷り込みも出来た。


政略結婚にありがちの年の離れたおじさんが相手ではなく、私より五歳年上なだけ、と言うのも安心材料になった。


正式な顔合わせ、婚約は合併後、落ち着いてから、という条件はあったけど、私は一刻も早くお会いして、親の決めた婚約者を『好き』になりたかった。


だから、大学卒業後、コネを使って入社し、樹さんと同じ職場に配属もしてもらった。
だけど、私は自分に刷り込ませるまでもなく……先輩として出会った樹さんに、その日、一目で恋に落ちたのだ。
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