婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
私に二時間遅れて、樹さんが帰ってきた。
きっと映画が終わってまっすぐ帰ってきてくれたんだろう。
そう思えるタイムラグだったからホッとして、同時に、青木さんと最後まで映画鑑賞を楽しんできたことに、胸がチクッと痛んだ。
「……なにしてんだ? 帆夏」
マンションのエントランスの前で、部屋に入らず階段脇の花壇に腰掛けていた私を見て、樹さんは怪訝そうに眉を寄せた。
「チケットだけじゃなく、鍵も落としたのか」
どこまでも呆れた表情でそう言いながら、樹さんは私の方にゆっくり歩を進めてくる。
「……ごめんなさい。私、バカで」
目の前で彼が足を止めたのがわかっても、私は花壇に腰を掛けたまま、顔を俯けて呟いた。
「ほんとだよ」と、溜め息混じりのぼやくような声が聞こえてくる。
「だったら言えばいいだろ。別に満席でチケットが手に入らないわけじゃないんだし、劇場に来てくれれば、そう出来たのに」
「……はい」
言い返すことなく静かに従順に頷く私に、樹さんは無言でスーツの上着から携帯を取り出した。
そして、操作することなく再びポケットに戻す。
「連絡もないって、どういうことだ?」
咎めるように言われて、私はおずおずと顔を上げた。
月明かりを背に浴びた樹さんが、不機嫌そうに表情を歪めて私を見下ろしている。
きっと映画が終わってまっすぐ帰ってきてくれたんだろう。
そう思えるタイムラグだったからホッとして、同時に、青木さんと最後まで映画鑑賞を楽しんできたことに、胸がチクッと痛んだ。
「……なにしてんだ? 帆夏」
マンションのエントランスの前で、部屋に入らず階段脇の花壇に腰掛けていた私を見て、樹さんは怪訝そうに眉を寄せた。
「チケットだけじゃなく、鍵も落としたのか」
どこまでも呆れた表情でそう言いながら、樹さんは私の方にゆっくり歩を進めてくる。
「……ごめんなさい。私、バカで」
目の前で彼が足を止めたのがわかっても、私は花壇に腰を掛けたまま、顔を俯けて呟いた。
「ほんとだよ」と、溜め息混じりのぼやくような声が聞こえてくる。
「だったら言えばいいだろ。別に満席でチケットが手に入らないわけじゃないんだし、劇場に来てくれれば、そう出来たのに」
「……はい」
言い返すことなく静かに従順に頷く私に、樹さんは無言でスーツの上着から携帯を取り出した。
そして、操作することなく再びポケットに戻す。
「連絡もないって、どういうことだ?」
咎めるように言われて、私はおずおずと顔を上げた。
月明かりを背に浴びた樹さんが、不機嫌そうに表情を歪めて私を見下ろしている。