婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
笑ってる顔が一番好き。
でも怒ってる樹さんも、どんな樹さんでも私にとっては宝物。


私はきゅんとしながら唇を噛んで彼を見上げた。
私の視線に、樹さんが怪訝そうに首を傾げる。


「さ、探してたら、時間過ぎちゃって」

「はあ?」

「とにかく早く行かなきゃって、そればっかりで、連絡しそびれて」

「……お前、来たのか?」


私の返事に、樹さんが静かにそう訊ねてくる。
私は膝の上でギュッと手を握りしめながら、一度だけ小さく頷いた。


「だったらなんで声掛けなかった?」

「かっ……掛けられるわけないじゃないですかっ……!」


あまりに静かな樹さんの声に神経が逆撫でされて、私は思わず声を張り上げた。


彼が私を見下ろす表情は、さっきからほとんど変わらない。
私ばかりが煽られて、ちっとも冷静でいられない。
それが悔しくて、私は再び顔を俯けた。


「……だって、青木さんが……」


小さく呟いた時、唇が震えた。


言いたくないのに口を突いてしまった言葉のせいで、さっきまでの私の醜い感情が再び胸に湧き上がってくるのがわかる。


けれど樹さんは、「ああ」となんでもないことのように呟いた。
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