婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「まさか、トップ交代か……?」


女性たちだけじゃなく、男性客からもそんな声が漏れ聞こえた。
噂話とは言えあまりにビックな上、全くの初耳のそんな言葉に、私までギクッと身体を強張らせた時。


「このような場に私事で恐縮ですが……。私、春海樹は、弊社副社長の生駒氏のご息女、帆夏さんと婚約いたしましたこと、ご報告申し上げます」


まっすぐ前を向いて、樹さんがはっきりとそう言った。


――え……?


一瞬、自分の耳を疑って、私は大きく目を見開いた。


会場内のざわめきが大きくなり、さざめくような歓声が上がる。
私の心臓はドクンとまるで抉られるような大きな音を立て、ドキドキと加速し始める。
耳元で全身の拍動を聞いてるみたいで、一瞬目の前がグラッと大きく揺れたような感覚がして、頭の中が真っ白になった。


会場全体から割れんばかりの拍手が聞こえる。
その中には、女性の小さな悲鳴のような声や、『おめでとう!』と高らかな祝福の声も混じっている。


かなりの騒々しさなのに、私の周りから全ての音が遠のいていくような気がした。
私はその場に呆然と立ち尽くしたままで、ただ演壇の上の樹さんを見つめ続けた。
< 215 / 236 >

この作品をシェア

pagetop