婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「仕方ないから、堕ちてやるよ、帆夏」


そんな太々しい言葉を、樹さんは大きく空を仰ぎ見ながら呟いた。


「えっ……」

「言っとくけど、惚れたわけじゃない。……でも、お前の『宝物』っていうのは、悪くない。ただそれだけだけど」


一瞬前よりもっと力強く胸が拍動するのがわかった。


向けられた背中にもドキドキする。
どんなに手を伸ばしても届かなかった樹さんの背中が、今、私の目の前に無防備に晒されている。
そう思った瞬間、胸に込み上げてくるなにかに突き動かされて、私は弾かれるように樹さんの背中に抱きついていた。


「樹さんっ……!!」

「うわっ……なんだよ、いきなりっ……」


私の勢い任せの行動への樹さんの反応は予想通り。
だから怯むことなく、彼の身体の正面で、自分の両方の手を繋いだ。
右手には、指輪の感触を感じることが出来る。


「私、樹さん以上に大事なものなんかありません。これから先ずっと、樹さん以上の最高の宝物なんか、私、いりませんから……!」


今まで口にしてきた『好き』と同じように、私のありったけの気持ちを全部込めて、樹さんにそう告げた。
腕の中に囲い込んだ樹さんが、クスッと笑うのがわかる。


「……はいはい」
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