婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
小さな笑いを含んだ溜め息混じりの声が私の耳にも届く。
だけど。


「……お前のこの先の人生。俺がいないと随分と色褪せたつまらないものになりそうだしな。性に合わないけど、ボランティアしてやる」


どこまでも樹さんらしい、意地悪にからかう酷い言葉。
それでも今日はなぜだかとても温かく感じる。
その温もりを実感させてくれるかのように、樹さんが私の両手に手を重ねてくれた。


「……樹さんがいてくれれば、この先の私の未来は七色です」


樹さんの背中でグスッと鼻を鳴らしながら、私は重ねてそう言った。
はは、と短い笑い声が聞こえる。


「バラ色は予想してたけど、七色か。……あー……負けたよ。お前には」


ちょっと投げやりのそんな言葉に煽られながら、私は腕に力を込めた。


冷たい海風が私と樹さんに吹き付ける。
この寒さのせいか、プロムナードからも招待客の声は聞こえなくなっていた。


「じゃあ俺も、俺を一生の宝にして、後悔させない男になってやるよ」


強気な樹さんの声が、背中に当てた頬に響くように伝わってくる。
押して跳ね返されるだけだった私の想いに、少しずつだけど、樹さんが返してくれようとしてるのが感じられる。


夢みたい――。


私は目を閉じて、樹さんの温もりを感じながら、二人で進む七色の未来を思い描いていた。
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