婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
それを見て、私はきょとんと目を見開いてから何度か瞬きをした。


「か、風邪薬……?」


小さなボトルのラベルには、確かに『風邪の引き始めに』というコピーが踊っている。
どうして樹さんがこんなもの?と、不思議な気分で見上げると、樹さんはふいっと私から目を逸らした。


「まな板みたいな胸しかないくせに、いっちょ前に大騒ぎしやがって。挙句風邪引いて俺のせいにされちゃ堪らないからな。その上なんだ? チームリーダー捕まえて、コピー取りしろってか? 俺に仕事被らせようなんて、百年早いんだよ、このボケ」

「なっ……まな板って、酷っ……! ま、まだ誰にも見せたことなかったのにっ」


思わずボトルを握り締めながら言い返すと、樹さんはふんとふんぞり返って鼻を鳴らした。


「『まだ誰にも』だあ? そんなの当たり前だろ。お前の裸見る男なんて、後にも先にも一生俺だけなんだから……」


樹さんが強気で言い放った言葉に、なぜだかドクンと胸が騒いだその時。


「え~……なんか意味深じゃな~い? 春海君」


妙に間延びした声が聞こえて、私はドキッとしながらドア口を見遣った。
私と同じ反応をして、樹さんもそっちに顔を向ける。


ニヤニヤ笑いながらそこに佇む青木さんを見て、樹さんがギョッとしたように目を見開く。


「……なんだよ、青木」
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