婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
ボソッと呟いた言葉に、樹さんはわずかに眉を寄せた。
私の言葉に確かに反応したのになにも言わず、私が散らかした缶を片付けている。


「なんで黙ってるんですか?」


言い訳でも聞くつもりなのに。
樹さんは表情も変えずにヒョコッと肩を竦めるだけ。


「だからなに?」


しかも、返ってきたのは、全く予想していなかった開き直ったような問いかけ。
いや、もう開き直るとかでもなく、私には言い訳も説明もする必要がないということだろう。


それが不満で、私はソファに座ったまま身を乗り出し、樹さんの横顔をジーッと見つめた。


「……私って、それだけの存在でしかないんですか」


唇を尖らせて呟くと、彼は私に横目だけ向けて、鬱陶しそうに眉を寄せた。


「その様子じゃ、合コン収穫なかったんだろ。残念だったな。会費の元も取れずに寂しく家で飲み直しか」


答えて欲しいのに、涼しい横顔で茶化される。
淡々とした声で受け流される。


そんな風に意図的に感情を隠されてしまったら、私はますます樹さんがわからなくなる。


立ち上がろうとする樹さんの腕を、私は反射的に掴んでいた。
酔いに任せた勢いで、思いの外力がこもってしまったのか、樹さんが一瞬バランスを崩す。
私はソファから腰を浮かせ、ほとんど体当たりするように彼に抱きついた。
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