婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「いい年して、いつまでもいきがってばかりのドラ息子ですが……どうか、予定通り縁談の話を……」


社長が平身低頭で私にそう言うのを聞いて、「ちょっと待てよ」と樹さんが声を上げて遮った。
その声に、私と社長が同時に彼に目を向けた。


「樹。この期に及んでまだ足掻くか。昨夜散々話し合ったはずだ。お前も納得したじゃないか」


社長が舌打ちしながらそう告げると、樹さんは「ふん」と鼻を鳴らして、この上なく不機嫌そうに表情を歪めた。


「うちの会社の新規事業開拓の一環で、生駒カンパニーのこれまでの業績とノウハウが必要だった。業務提携ではなく合併した方が、今後の事業拡大も期待出来る。お互いウィンウィンの合併。……それはわかるけどね」


社長に早口でそう告げながら、樹さんは肩を落として大きな溜め息を吐く。


「大正や昭和じゃねえんだぞ。平成だ、平成。このご時世、会社の為だ、結婚しろって言われて、あっさり『はい』って頷く跡継ぎがどこにいるんだよ。……って言うか、コイツくらいなもんだろ……」


そう言いながら、私にちょっと辛辣な視線を向けてくる。
反射的に怯む私に気付き、社長が厳しい口調で『樹』と窘めた。
樹さんは言葉を切って肩を竦める。
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