婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「……昨夜の」


わずかに顔を俯かせ、樹さんがポツッと短く呟いた。
聞き返す前に、「お前が見た女」と続けられ、一度ドクンと胸が鳴るのを感じた。


「あ、あの、樹さん」


気になるけど、聞きたくない。
そんな気持ちが先行して、私は樹さんに呼びかけながら、逃げ場を探すように後ろ手でドアハンドルを確認した。
けれど。


「違うからな。あれは俺の従姉妹で……そういう関係もないから」


淡々とした声で明瞭に説明されて、私は思わずゴクッと唾を飲み込んだ。


「……従姉妹……?」


彼の言葉を繰り返し、その意味を自分に染み込ませようとした。
樹さんは「そう」と目を伏せて頷く。


「しかもあれで今年四十だから」

「……え? ええっ!?」


更にツッコんだ説明を聞いて、私は度肝を抜かれて大きく目を剥いた。


あのスタイルの良さで!?
遠目にも美人だと思ったあの人が……!?


いやいやいや……美しさに年齢なんか関係ない、とは思うけど。


軽く混乱する私の前で、樹さんはなにやら難しい表情を浮かべて、ふうっと唇をすぼめて息をした。


「親族だし、年の差あり過ぎだし、さすがに俺にも範囲外だから。もちろん向こうも。……わかったか」

「は、い……」
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