恋愛の始め方
あたしはゆっくりと立ち上がり、鞄を持つ手にグッと力を込めた。


「お疲れ様でした、間宮先生」

「お疲れ、伊藤」


その呼び名は、病院で互いに呼ぶときの名だ。

全てが始まった、この部屋。

この部屋に、全てを置いて行く。

そして、あたしは部屋を出た。

こんなに名残惜しいと思ったのは、初めてだと思う。

もっと違う始め方をして居たら、あたし達は普通の恋人になれただろうか?

なんて、ね。

きっと、あんな始め方をしなければ、あたしと間宮が親しくなることなんてなかっただろう。

他の看護師と同じ、ただの看護師の1人としてしか見てくれていなかっただろう。

もう、やめよう。

思い出すのも、考えるのも・・・

あたし達は、終わったんだ。

< 221 / 404 >

この作品をシェア

pagetop