恋愛の始め方
陸は、小さなため息をつく。


「もうすぐ結婚する女に、俺はいつまでも縋ってカッコ悪りぃな」


独り言のように、そんな言葉を吐き捨てた。


「隙あればなんて思ってたけど、始めから隙なんてなかったんだな」


フッと、自嘲的な笑みを零す。


「本気だったよ」

「え?」

「昔も今も、本気で志乃のことが好きだった」


陸の言葉に、ギュッと胸を鷲掴みされたような、切ない痛みが胸を締め付けた。


「そんな顔すんな」


そう言い、あたしの頭を撫でる。

この温もりを、あたしは覚えている。

昔大好きだった、陸の手。

でも今のあたしが欲しいのは、陸の温もりじゃない。

あたしが欲してるのは、彼の温もりだから。

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