恋愛の始め方
駅に着き、ホームで電車を待つ。

こういう時、ドラマとかなら好きな人が見送りに来るのにな。

そんなこと、あり得ない。

そう理解しているのに、心のどこかで期待してしまう。


「ホームに電車が参ります」


アナウンスに、フッと笑みをこぼし、あたしは来たばかりの電車へと足を踏み入れた。

空いてる席に腰掛け、外を眺める。

そして、電車はゆっくりと動き出す。


「バイバイ」


ここに居ない、彼に別れを告げる。

走り出した電車の中で、ギュッと胸元の服を掴む。

寂しい、わけじゃない。

悲しい、わけでもない。

だけど、ただただ胸が苦しい。

言葉にならない想いが、チクチクと胸を痛み続けた。

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