どん底女と救世主。

待っていようか、それとも先にもう寝てしまおうか。

明日仕事だしな。寝てようかな。

でもな…。


頭に浮かぶのは、終業後飲み会に向かう一課のメンバーの中で、当たり前のように深山課長の隣に立っていた希ちゃんの姿。


…やっぱり、待っていようかな。


そう決意したとき、


ーーかちゃ。

鍵穴に鍵を差し込む音。


廊下から足音が聞こえて、リビングの扉が開いた。


「おかえりなさい。早かったですね」

「ああ、明日も仕事だからな。二次会は阻止してきた」


まだ12時も回ってないのに。もう少し遅くなると思ってた。


「部長がしつこくてな。無理矢理タクシーに押し込んできた。あのタヌキ親父、本当に手が焼ける。
中田も部長にしこたま飲まされて泥酔してるし」


とにかく疲れた、と大きなため息を吐きながら、隣に腰を下ろした課長。

かなり酔っているのかな。課長、いつになくよく喋る。

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