どん底女と救世主。

「本社に戻ることが決まってお前の顔が浮かんだ」

「へ?」


思いがけない課長の言葉に素っ頓狂な声が出る。
そんな私に気も止めず続けた。


「俺がどんなに厳しくしても、めげずに食らいついてくる奴が居たなって思い出して、あいつはどうしてんだって期待して戻って来たんだよ。
なのに、お前はなぜか左遷寸前。しかもその理由が男絡みだと。
ムカついた。何だか無性に腹がたった」


最後は本当に怒ってるような口調で。
そこまで一気に言うと、

ーーふわり

抱きすくめられる。

課長の意外にも逞しい胸に押し付けられて、心臓が壊れそうなほどに暴れ出した。


息もできなくてもがいていると、


「他の男に泣かされるなよ」


耳元で低く低く囁かれる。


あれ、この言葉。

聞いたことがある気がする…。

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