「嘘だよ」とは言えなかった。

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「じゃあ後でな」




春人は笑顔で私に手を振った。




私も後でね、と手を振り返した。



今日の授業も全て終わり、放課後私は自分の席に座りシャーペンを握った。



春人が部活終わるまで私は勉強そしてその後に一緒に帰る、これが私たちの日課。



クラスメイト達も部活やら帰宅やらで教室は私以外いなくなってしまった。




そんな中ガラッとやけに大きくドアの開く音が教室に響いた。



「あ、坂峰さんだ春人待ち?」



そんな声が私の耳にクリアに聞こえて胸がドクンとなるようなそんな感覚を感じた。




「う、うんそうなの」



私の視界に入ったのは部活着に着替えた、松原君。



教室で2人の空間、そう考えるとなんだかとても居た堪れなくなる。



「本当に仲良いよなお前らカップル」



ニカッと笑う松原君の笑顔は眩しくそして、残酷だ。



普通喜ぶべき言葉にどう返答すればいいのか戸惑うなんて、なんて奴なんだろう私は。



「ありがとう、それにしても松原君部活は?」





「ああ、これ忘れちゃって」




そう言って椅子にかけてあるブレザーを持ち上げた。




私も「ああブレザーね」と言葉を返すとまたニカッと笑う松原君。



「じゃあ俺行くわ、勉強頑張れ!」




「ありがとう松原君も部活頑張って」




去っていく松原君の後ろ姿を私は見つめて、ため息を吐いた。



何気ない会話それだけで私は凄く悪いことをしている気分。


松原君にやましい気持ちはない、あるのは私だけだというのに。



ああ、もう本当にどうすればいいのかわからないよ。











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