「嘘だよ」とは言えなかった。




どうにかこの気持ちを払うべく私は勉強に集中した。



ひたすらノートや教室を見つめてシャーペンを走らせた。



そのせいか外は暗くなり始め、携帯が鳴っていることにも気づかなかったみたいだ。




「真美、帰ろう」



教室にわざわざ春人が迎えに来てくれた。




「どんだけ集中してたんだよ」




「教室で一人勉強すると凄い集中できるよ春人も成績ちょっとアレだしやってみれば?」




「アレとか言うな」


二人しか居ない廊下に私達の笑い声が響く。



普段通り、いつも通り。



ギュッと握られた手ももちろん私もギュッと握り返す。





ちゃんといつも通りだよね私達。





帰り道二人の空間嫌じゃない、むしろ幸せだし楽しい。


それにこういう時いつも「ああ春人が好きだ」と感じるのも本当だ。



なのに前のようにはいかない、松原君が私の片隅から消えない。



それを凄く感じる時間だ。





「てか今日ミツが教室行ったっしょ?」



不意打ちな春人の言葉に一瞬時が止まるような気分を感じた。


ミツとは松原君のあだ名だ。


松原蜜也だからミツ。



「うん、ブレザー取りに来たみたいだね」



私のその言葉に何かを思い出しのか春人は横でとても楽しそうに笑い始めた。



「それがどうにかしたの?」




「いやアイツさブレザー取りに行ったはいいけどその後なかなか戻ってこなくてさ、そしたら後輩のマネージャーに告白さてたみたいで」




いやーまさかあのマネージャーミツ狙いだったとは、と言いまた笑い出した。



マネージャー、告白。


その単語にヤケに胸が締め付けられるようだ。




「へ、へぇマネージャーって一個下のあの可愛い子?」




「そうそう、そのマネ可愛いってうちの部で結構人気だったからさミツめっちゃみんなにど突かれてて面白かったわ」





松原君はやっぱりモテるんだ。



当たり前だよねあんな爽やかでイケメンでそれに面白いし、モテない訳がない。




だけど胸が痛んでしょうがない。




「その子への返事はどうしたの松原君」





私がそう言うと春人は、あーと言って上を向いた。




「保留、だってさ」




「そうなんだ」





保留、か。



「松原君好きな人いるのかもね」




何気なく私が言った言葉に春人は悩ましげな顔をした。




「アイツそう言うの話したがらないしなぁ、こんど聞いてみるわ」




聞かなくていい。



松原君の好きな人なんて私は知りたくなんてない。



そんなことを考えた瞬間私は最低だ、と思った



隣に春人がいるのに松原君のことばかり考えている自分に。














いつも春人は私の家まで送ってくれる。



今日もいつものように私を家まで送り届けてくれてじゃあねと別れた。




自分の部屋に入りしゃがみ込み手で顔を覆った。


泣いてなどいない、だけど自分がとても馬鹿すぎて恥ずかしい。



浅ましい考えばかりが浮かぶ自分がとてつもなく恥ずかしい。
























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