年下男子とリビドーと

課長に呼び出され面談が行われた。

「わかっていると思うけど、冴木さんは9月いっぱいで3年が経ちますね」

わたしはぎくりとした。
派遣社員にとって、3年は大きな節目。
直雇用になるのか、契約満了になるのか、道を分かつ時。

覚悟はしていたけど……最悪クビも考えられる。
課長の次の言葉を待つ間、心臓の音がどんどん大きく速くなって来る。

すると、課長の口から思ってもみなかった言葉が飛び出した。

「君さえ良ければ、正社員に推薦しようと思ってるんだ」
「……え?」

「君の仕事ぶりは他の社員たちからも定評があります。
もちろん条件はある。試験と面談を受けて貰わねばなりません。正社員になれば、責任も出て来るし、派遣やバイトさんの指導もして貰わなければいけない」

派遣から正社員になるだなんて、考えたことも無かった。

「この話を受けるかどうかは自由です。ただ、受けなかった場合、10月からはパートになるので、交通費は出ますが時間給が下がります」
「それは……要は給料が下がりますか?」

「おそらく」

正社員の試験と面談が7月末にあるらしく、6月末までに受けるかどうかを決める必要がある、それが面談の内容だった。

わたしは頭を殴られたような衝撃を受け、とぼとぼと廊下を歩いた。

正社員……こんなチャンスは滅多に無い……。

驚きを隠せず、呆然としていた。

< 37 / 73 >

この作品をシェア

pagetop