空の上から愛してる
笑ってくれないんだもん。
あの眩しい笑顔を見せてくれないから、あたしは悲しくなる。
「なぁ、これっていくらしたの?」
すると突然、先輩はポケットからあるものを取り出し、こちらに見せてきた。
手のひらに収まる、指輪。
あたしの中が止まる。
どうして…こんなことをするの…
終わりがちらつく。
悲しさが込み上げる。
信用を完全に無くした瞬間だった。
「百合、指輪貸して」
低い声で優くんは言う。あたしは何も言えずに、ただ下を向いていた。
これが夢であって欲しいと何度願っただろうか…。
秋風が吹いていく。
このままあたしも連れて行って欲しい…。
「貸せない理由でもあんの?」
口調が変わる。
やはり怒っているようだ。
当たり前か。
あたしが悪いのだから。
「貸して」
そう言って彼はあたしの手を握り、薬指の指輪を無理矢理外した。
その手が、冷たかった…。