もしもの恋となのにの恋
もしも・・・忍(しのぶ)が生きていたなら・・・。
私はもう何度目ともわからない、そんなありえもしない『もしも』を流れて行く景色の中、ぼんやりと空想していた。
今、私のすぐ横にいるのは忍ではなく、司だ。
司と私の出逢いは高校だった。
付き合う切っ掛けとなったのは司の一目惚れだった。
なぜ、司はこんな何もない私に一目惚れをしたのだろう?
普通の顔に普通のスタイル・・・。
そして、普通の性格・・・。
私は何をとっても『普通』でつまらない女なのに・・・。
私は中学時代に亡くなった村上忍(むらかみしのぶ)のことが好きだった。
それは忍が亡くなってからも変わらなかった。
そして、それは今も・・・。
私は今でも忍のことが好きだ。
もちろん、司のことも好きだけれど、それはどこか忍に劣る。
それを私は申し訳なく思う。
司はそのことを笑顔で『気にしなくてもいい』と言ってくれている。
けれど、それでもその負い目は私を苦しませる。
もしも、忍が生きていたなら私は司には目もくれなかっただろう。
それほど私は忍のことが好きだった・・・。
忍は容姿端麗で本当に優しいく、非凡な人だった。
私は本当に本当に忍のことが好きだった。
私は本当に本当に忍のことを愛していた。
それでも私は忍の恋人にはなれなかった。
忍には好きな人がいた・・・。
< 13 / 105 >

この作品をシェア

pagetop