もしもの恋となのにの恋
孤独
相変わらずだな・・・。
秋人(あきと)のその言葉に私は苦笑するより他になかった。
秋人は私のスマホをいじくりながら小さな溜め息を吐き出した。
「・・・で?・・・どうすんの?」
秋人は私のスマホから視線を上げるとその視線を私へと向けてきた。
昔から変わらない秋人の鋭い視線に私は少し、たじろいだ。
「・・・まさか会うなんて馬鹿なこと、言わねえよな?」
私を試すような秋人の言葉に私は何の反応も返すことができなかった。
そんな私を秋人はどう思ったのだろう?
私は黙ったまま何のリアクションもとらずに秋人の様子を臆病な小動物のようにチラチラと窺った。
「・・・宮原さんは何て?」
「え?」
秋人の口から出た思わぬ名前に私は瞬いた。
宮原。
それは私の彼氏の名字だ。
彼氏の宮原司(みやはらつかさ)は私の初彼にして最愛の人だ。
これは余談だが私は彼以外とお付き合いをしたことがない。
「もちろん、宮原さんも浅野からの連絡のこと、知ってるんだろ?・・・何て言ってた?」
秋人はそう言うと少し冷めたブラックコーヒーを静かに啜った。
相変わらず秋人は一つ一つの所作が無駄に色っぽい。
全く、その色っぽさを少しはわけて欲しいものだ。
私と秋人は小学校に上がる前からの幼馴染みでお互いの気心を知り尽くした間柄だ。
もうそれは幼馴染みと言うよりは双子の兄妹に近いのかもしれない。
私は小さく頷いて秋人の質問にゆっくりと答えていくことにした。
「知ってる。・・・昨日、司の家に泊まったから」
私の返答に秋人は困ったような笑みを浮かべ、空になったコーヒーカップを対の置き皿の上へと戻し、私の顔をじっと凝視した。
「お前、いちいち一言が余計。・・・『泊まった』とか俺に言わなくていいから」
秋人の言葉に私は瞬いた。
確かに秋人の言う通りだ。
そんなこと、秋人に言う必要なんてないことだ。
そう認めると私の頬は高熱時の時のように熱くなっていった。
嗚呼、恥ずかしい・・・。
「・・・で?宮原さんは何て?」
秋人の促しに私は何とか我に返って秋人の求める答えを何とか自分の言葉で紡ごうとした。
「・・・『本当に会いたいの?』って聞かれた。だから、私は・・・」
「『会いたい』って・・・答えたの?」
秋人は私の言葉を無情に遮ると意地悪く笑った。
私は何も反論せずにただ、頷くにとどめた。
本当に秋人は質が悪い・・・。
そう。
それは昔から・・・。
「・・・相変わらず、馬鹿だな」
秋人のその言葉に私は大きな溜め息を吐き出した。
そんなこと、わかっているからいちいち言わないでよ・・・。
私のその心情を察してか秋人は意地の悪い笑みを一層濃くし、クスクスと声を漏らして笑いだしていた。
嗚呼、本当に秋人は質が悪い・・・。
「千鶴は何で会いたいの?会ってどうするの?」
秋人のその言葉に私は黙り込んでしまった。
なぜ、会いたいのか・・・。
会ってどうするのか・・・。
「・・・わからない」
そう答えることしか私にはできなかった・・・。
「・・・本当に馬鹿だな」
秋人は本当に・・・本当に小さな声でそう言うと私と空になったコーヒーカップを残して店を出て行ってしまった。
店に一人取り残された私はその空になったコーヒーカップを静かに見つめ見た。
嗚呼、私は孤独だ・・・。
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