もしもの恋となのにの恋
「なぁ、秋人 」
宮原さんの呼びかけに俺は『はい・・・』と覇気なく返事を返し、自身の愛車を運転している宮原さんの横顔をこっそりと盗み見た。
宮原さんの横顔はどことなく忍に似ている・・・。
不意にそんなことを思った。
本当は全く似ていないはずなのに・・・だ。
俺は自分の愛車を千鶴の住むマンションの駐車場から適当なコインパーキングに移動させ、宮原さんの勧め(命令)で宮原さんの愛車に乗った。
宮原さんは俺が車に乗るとすぐに俺に行き先も告げず、愛車を安全に発進させた。
それを俺はなぜだかひどく怖いことのように感じた。
今日の宮原さんは何を考えているのかわからない・・・。
なのに・・・だ。
なのに自分からその考えを聞くことはひどく憚られた。
まあ、元から宮原さんは何を考えているのかわからないような人ではあるのだけれど・・・。
「千鶴こと、どう思ってる?」
ドクン・・・。
心臓が嫌に脈打った。
覚悟はしていた・・・。
なんとなく、そう聞かれるであろうことは予期していた。
なのに・・・だ。
なのに俺の心臓は嫌に脈打った。
俺は平然を装い、流れていく景色に目を向けた。
夏は青々としていた街路樹の葉はほんのりと赤や黄色に染まりだしている。
季節はまたいつの間にか移ろいだしている・・・。
俺はなんとなくその移ろう季節に取り残されているようなそんな鈍い錯覚に襲われた。
俺だけが世界から疎外されているようなそんな感覚・・・。
嗚呼、孤独だ・・・。
秋はなんとなく物悲しい・・・。
俺と同じように・・・。

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