甘く、温かいドリンク
君には奥さんも子供もいて、私は君の愛人だ。
君は私のことを彼女と呼ぶけれど。

会うのは決まって夜。人目を避けて、さびれたラブホテルへ向かう。
小汚いラブホテルに短い時間滞在するというのも、慣れたものだ。

昔は、男の人というのは私にお金をかけてくれるのがあたりまえだと思っていたからだ。

たぶん、君より私のほうが自由になるお金は多いし、ホテル代も飲み代も、私がおごることのほうが多い。

最初は戸惑ったが、これにも慣れた。君はいやがるけれど。
二人の時間を作り出すには、ほかに方法がないのだから。


奥さんも子供もいるくせに、私を口説き落した、本当に悪い男。

きっと、離婚もしないだろう。私はいつか何かが起こるまで、君の彼女という名の愛人だ。

何度も喧嘩をした。寂しさや辛さや悲しさで、ときどき私の心は暴走する。
連絡の取れない日はきっと、家でパパをしている君。
奥さんとも寝ているのだろうか。
私とは行けないところにも、きっと家族で楽しく出かけているのだろう。


妄想や想像や我慢は、私の心を蝕む。

一緒に居られない時間が、闇を拡げてゆく。


こんなに自分をおろそかにして傷つけてまで愛する価値があるのか?

何度別れようとおもっただろう。


もう今度こそ終わり、そう泣きながら決意しても、劇的に愛された記憶は鮮明で、私は君を嫌いになることができない。



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