冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
さすがに目を閉じた。人前で、しかも、自分の会社の社長に、「あーん」をしてもらうなんて前代未聞。


でも、目を閉じて口を開けるなんて実はこっちのほうが、恥ずかしいことかもしれない。


「美味しい、美味しいです。なんですか、このオムレツ。チーズの溶け具合もいいですし、ハムの塩っけがいいバランス。本当に美味しいです」


オムレツが口の中に入れられた瞬間、目はぱっちり開き、思わず言わずにはいられなかった。やっぱり美味しいものは、美味しい。


「美味いな。ほら、みぃ、もっと食べな」


「やっぱり、こういうの楽しいな」と社長が聞こえないくらいの声で、呟いたことも気づかず、目の前の食事で餌付けされた私。


そして、この後、自分がやらなくてはいけない絶対的社長命令のことも忘れて、社長に「あーん」で食べさせてもらい続けた。
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