アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
22




たくさんのフラッシュがミハイルの顔を照らした。
彼はそうした無遠慮な光を受けることに慣れているのか、わずかに目を細めただけで所定の位置についた。


軍服姿の彼を見るのは初めてだった。
雪深い国のものだからか、目にもあざやかなロイヤルブルーの軍服の上に広い襟付きの黒コートを羽織っている。
カメラのフラッシュを受けるたびに、軍服を飾る金の縁飾りや勲章がきらきらと光を反射していた。

彼はいつの間にか髪を金髪に戻していた。
きれいに切りそろえた髪を形の良い小さな頭に撫で付け、凛とした態度でカメラの前に出るその姿は「さすが一国の王子」とため息が出るほど高貴だった。

ミハイルは片側にブルーの飾りのついた円筒形の帽子を台に置き、集まった報道陣を見まわした。
ブラウン管の向こう側にいる私がはっと息を詰めるほど印象的な瞳だった。


彼は紙等を見ることもなく、顔を上げたまま話を始めた。
初めて聞く、彼のカガン語だった。言葉一つ一つの意味はわからなくとも、そのイントネーションは優しく、音楽的な美しさを持っていた。

テレビ画面の下部に少し送れて彼の言葉の翻訳が表示された。

「日本国民の皆様に深い敬意を表しますとともに、今回、わが国で起こったクーデターに対し、日本国の皆様が深く関心を寄せてくださり、ご心配くださったことをこの場にて感謝いたします」

ミハイルはそう言ってからたっぷり一分間、少し頭を俯けて目を伏せた。

< 233 / 298 >

この作品をシェア

pagetop