アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)


私は思わず自分のこれまで辿ってきた道を振り返った。



受験は……学校選びの段階で間違っていたと思う。

どこに行きたいという希望は特になかった。
平均程度の学力と親の経済力、自宅から学校までの距離で入学可能なところといえば数校しかない。その中の一つを選んで進学した。ただそれだけ。学部も学力を考慮すればほぼ選択の余地はなかった。

短大だったので忙しかったけれど、講義を欠席さえしなければなんとか卒業は出来た。出席は完璧だった。けれど熱心に勉強するわけでもなかった。

学生時代の私は通学途中で出会う学生たちが寸暇を惜しんで勉強する姿を、不思議な気持ちで眺めていた。同じ学生なのに、彼らが自分と同じ学生だとは思っていなかった。
今から思えば私ももう少し勉強に打ち込むべきだったのかもしれない。


その後の就職についても私は大学受験のときと同じく、自分の出身短大から簡単に行けそうな会社を選んだ。


父親は自分の店を私に譲りたかったみたいだけれど、父が私の進路に強く口出ししないのをいいことに親の意向は聞き流して適当に就職した。
その理由も自分で情けなくなるほど単純だった。
「自分のお給料が欲しいから」これだけだ。
こんな仕事がしたいとかどんな社会人になりたいという夢はなかった。


そうやって目標を定めず理想も掲(かか)げず生きてきたせいだろうか。
私は総務として配属された部署で、先輩にちょっと目をつけられただけでその会社をあっさり退職した。



今から思えば、あの先輩は気分にむらはあったがそんなに悪い人ではなかったような気がする。
それは喉元をすぎれば熱さを忘れるということなのか、それとも本当に私にこらえ性がなかっただけなのか。
今、振り返ってみても記憶は曖昧で、どんなことがいやだったのか具体的には思い出せない。
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