もしも、もしも、ね。


―――大きいな、背中・・・



なんて、ことに。

後から思い返せばきっと突っ込みどころ満載だったのだろうけれど、

このときの私は溶けるようにただただ彼の背を見つめていたのだった。

どこに行くか、とか

何やってんの、とか

カバン!!、とか

そんなことどっかに行ってしまって、

さっき見た陸斗の背中とユウの背中を重ねてしまう。



トクン、トクン



心臓がうるさい。

これは走ってるせい?

思い出す陸斗のせい?

それとも、目の前のユウのせい?





陸斗はサッカーをやってるのに少し猫背だった。

ユウは、バスケのせいかピッとしてるの。

首の毛は陸斗の方が長いかな。

でも肩幅はユウのほうがしっかりしてる。

肌色は陸斗の方が黒い。陸斗は外の競技の人だから。

手は・・・ユウの方が硬い。ボール、しっかり掴んでるからかな。

ユウに似合うのは、白いYシャツ。

陸斗は、いつも黒のTシャツを着てた。

そんなにだらしなくない腰パンのユウ。

陸斗はパンツ見えるよ!っていうぐらい下げてた。

靴は、陸斗の方が穴開いたり紐切れたりボロボロ。

ボロボロじゃないけど、ユウのは驚くくらい真っ黒。



一つ一つを目に焼き付ける。

一つ一つを脳裏で思い出す。

似てるけど、なんとなく違うユウと陸斗。

私の時間を止めた陸斗。

私の時間を動かしたユウ。



でも、どっちも嫌い。

それだけは、一緒。


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