もしも、もしも、ね。
面陰−オモカゲ−

*1*



カウントダウンはまた1つ進む。

私はやっぱり何も出来ないまま、いつもの光景の中いつもの授業を受ける。

見慣れたシャーペンを、見慣れたノートの上で動かして、

変わらぬ先生の聞きなれた声を子守唄にし、

時折冬景色を頬杖つきながら見たりして、

その顔の向きを反対にするとユウが見えたりもして。

本当に、何も変わらない。



「はぁ。」



思わずため息が漏れてしまう。

私、いつまでこうしてる気だろう。

時間が待ってくれないことぐらい分かってるのに。

今のユウが偽者のように不自然だと思っているのに。

一度別れたからか、彼の傍にいることが麻薬のようで、

どうしてもこの状態を変える気が起きないのだ。



―――まぁ、実際変える気が起こったところで何をすればいいかわからないわけなんだけれど。



そんな日常の中。

カウントダウンが一桁になった今日。

事実が急激に進展するなんて、

今この瞬間の私は夢にも思っていないのだった。


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