もしも、もしも、ね。
「あぁッ!?てめぇ、アカリは関係ねぇだろうが!!」
なんて叫んだ、陸斗の方が早かった。
―――驚いた。
まさか、陸斗が私を庇うなんて。
はっと彼を振り返ってしまった私は反応が一瞬遅れて、
けれど「陸斗!」と大事になる前にきちんと咎めることが出来た。
大きく深呼吸して、正面から私より20センチは高い位置にある彼の目を見つめる。
「陸斗、ちょっと待ってて。」
「アカリ。」
「―――仕方ないから付き合ってあげるよ。」
これ以上ここにいられても迷惑だ。
私は唖然とした教師もクラスメートも陸斗も無視して、
自分の席に戻ると机の上にあったものをすべて乱雑にカバンに投げ込んだ。
それを背負って、一言。
「煩いのがいるんで早退します。」
「え?あ、あぁ・・・」
先生はもう唖然としていて、特に私を咎めようとはしなかった。
それとも、とりあえずこの“煩いの”をさっさと追っ払って欲しいのだろうか。
私は、「いこう」と固まる陸斗の袖を引っ張る。
最後に教室を見れば心配そうな顔をした望果と准君と目が合った。
大丈夫、と微笑んだ。
―――ユウの顔は、見なかった。