もしも、もしも、ね。


―――大丈夫じゃないのは、それ以前の問題でした。




目の前に並ぶスポンジケーキの山に、私は撃沈していた。

2時くらいから始めたケーキ作りは、スポンジケーキの段階でボロボロだった。

ぺしゃんこだったり、真っ黒だったり、生焼けだったり。

5時間作り続けた疲労と、自分の情けなさに、ケーキに囲まれながら私はダイニングの椅子に座って頭をテーブルにつける。

わ、私の料理音痴ってここまでだったんだ・・・と自分の重症度に半泣き。



「泡立てが足りないのよ。」

「うわぁッ・・・って、お母さん・・・。」

「それと、オーブンの高さの問題や暖め方の問題ね。」



テーブルに突っ伏していた私は気がつかなかったけど、気がつけば目の前にお母さんが座ってた。

いつ仕事から帰ってきたんだろう。

それだけ、私は夢中だったってことかな。

スーツ姿のままのお母さんは、たくさんの中から一番尋常に見えるケーキの隅をちぎってもぐもぐ。

さすが主婦歴20年。

見た目だけで判断付くなんて。
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